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僕が捨てた物語
「じゃあ、行くね」
彼女の表情にもう迷いはなかった。その目は前だけを見つめていた。
頑張って。応援してる。
僕は彼女にそう言ったが、
(引きとめたい…)
この期に及んでも、まだそう思ってしまっていた。
しかし、これまで何度も考えて、これがベストだという答えを出したのだ。
「ありがとう…私…幸せだったよ」
彼女の言葉が決心したはずの気持ちをグラグラと揺らす。
僕も。
そう声を出すのが精いっぱいだった。
涙が出そうになったが、何とかこらえる。彼女の門出に涙はダメだ。
にっこり笑って彼女は出ていった。彼女の姿が見えなくなった後も、彼女の笑顔は僕の心に焼きついたままだった…
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