○○日目

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『本日の選択を記入してください』  堅い音声が今日も白い部屋に投げ入れられる。無機質で一様に代わり映えのしない空間に。さもここがゴミ箱ですと言わんばかりに。  目の前に浮かんだのは二つの単語だった。いや、別に選択肢として与えられたものではなかった。  この部屋から一日逃げるためだけに用意されたものだ。これを捨てずに持っていれば、この両手をギリギリ振り回せる程度の四角い箱の中から出ないことになる。 『一日』 『趣味』  遠慮なく、一日を捨てた。  扉が開いた。真っ暗な通路がそれとわかるのは、あるかも分からない仄暗い光源が床を照らしているからだ。  足を黒の世界に踏み落とす。  一日が削られた。けれど構わなかった。通路の脇に置かれたスマートフォンを握って、電源を入れた。  画面を起動する。街中に出る機会が失われた。通路の先は見知った青で統一されたベッドがあって、学習机は中学以来埃を被ったままで、大きく備え付けられた本棚は空っぽなまま。  箪笥の上に鎮座するフィギュアやグッズを眺めて、吐息が零れた。  別に食事もいらなかった。
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