口の悪い人々

　リビングに入ると、聞いた事の無いような、歌謡曲の鼻歌が聞こえてきた。

「何やねん今日はキモイな！その鼻歌やめぇや！！」

「アンタこそ男の癖にキンキン五月蠅いなぁ！サッサと飯食わんと捨てるでぇ！」

　機嫌は良いらしい。全然突っかかっても喧嘩を買ってこない。

　調子が狂いそうなので、朝食を簡単に済ませて学校に向かおうと思ったその時だった。

ーーーーーーーーー何だその顔は！！

　普段、力士の如く化粧水をつけるだけのオカンが、今日はバッチリとメイクしていた。

　参観日に見たのを最後に、仮面のような化粧が再び降臨する日が来るとは思わなかった。