第1話

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何とか1時間ほどの打合せを終えると安堵と共に深いため息がでた。 無心でPCに打ち込んでいたからまとめれば議事録は作成できるだろうけれど、内容はほとんど頭に残っていない。 休憩所のソファに腰を掛けて先ほどまでの出来事と自分の感情を整理する。 森川さんとは個人的は会話をする事はなかったけれど、ただエレベーター前で見送る際、何か言いたげな視線を向けられて遮るようにして挨拶もそこそこに頭を下げて送り出した。 さすがに課長も何か感じたのかエレベーターのドアが閉まるなり「森川さん、顔見知りか?」と聞かれた。 「いいえ」と張り付けた笑顔で答えると、恐らくそれが真実でない事はバレバレだっただろうけれど課長はそれ以上追求することはしなかった。 SSGの担当はもともと関口さんで私が森川さんと会う機会はもうないだろう。 忘れよう。 向こうだってきっと私の顔なんて二度と見たくなかったはず。 忘れる。 もう私には何も関係のない人だから。 ソファにもたれかかった姿勢で目を閉じて自分に言い聞かせるように繰り返した。 だけどそれから2日後 森川さんから会って話をしたいと個人の社用アドレスにメールが届いた。
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