11649人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
「あさひな、さら、さちゃん?」
夫の新藤光樹と出会ったのは大学に入学して1ヵ月程たった頃だった。
私は友達になった河野由奈に誘われて…
というより頼み込まれてあるサークルの入会申込書に名前を記入していた。
「ちょっと新藤、馴れ馴れしい。更ちゃん奥ゆかしい子なんだから、あんたみたいの苦手なの」
しっしっとお追い払う仕草で目の前で記入している様子を覗き込むように見ていた彼をあしらう。
奥ゆかしいって…
ただ単にこれまで男友達なんていなかったから
女の子同士みたいに男の子と話す事ができないだけなんだけどな…。
なんとなく恥ずかしくなって俯き、残りの記入欄を埋める作業に没頭する。
この新藤光樹君という男の子は由奈ちゃんと同じ高校だったらしく由奈ちゃんは彼に頼まれて、私は一人じゃ嫌だという由奈ちゃんに頼まれてこのアウトドアサークルに入会することになった。
「入ってくれてありがとう。強制的な集まりとかはないから、幽霊部員でも全然大丈夫だけど。せっかくだから興味ありそうな企画があった参加してみて」
見つめられていると勘違いしてしまいそうになるくらい、人の目をみて話す人だ。
にこにこしているから威圧感は与えないけれど、こんなイケメンにじっと見られると落ち着かない気分になる。
目を惹く容姿に穏やかな話し方と優し気な雰囲気
この人きっともてるだろうな、と思った。
自分とはきっと縁遠い人だ、と。
最初のコメントを投稿しよう!