プロローグ

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目が覚めると見慣れた真っ白な天井が目に映る。 左側に顔を傾ければ、寝返りをほとんど打たないのかいつも寝始めた時と変わらない仰向けのまま眠る彼の姿が目に映る。 ほとんど変わらないいつもの彼の姿。 右側には木目調の丸い小さな時計と写真立てが置かれたサイドテーブル。 飾っている写真は新婚旅行の沖縄で撮った写真。 7年の付き合いで撮った数ある写真の中で、特にお気に入りの一枚だ。 ぼんやりした頭で時計を確認すると午前6時の5分前。 私は大抵目覚ましが鳴る少し前に目が覚めてしまうけれど、隣に眠るこの人がこの時間に目を覚ます事はほぼない。 寝起きの悪さはなんでもそつなくこなすこの人の弱点のひとつだ。 この2年、目を覚ますとまず隣に眠る彼とその逆隣、写真の中の夫の笑顔を見て起きるのが習慣になっていた。 いつもの朝 いつもの習慣 いつもの光景 結婚して5年。 私の夫は隣に眠るこの(ひと)ではない。 私はいま、かつて夫と暮らしたこの部屋で、 夫の兄と暮らしている。
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