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「光樹が生きていたらとか…今はもう全部考えない事にした」
自分の中にあった迷いや弟に対する後ろめたさや罪悪感を取り除けば、残った気持ちはこれだけだ。
「光樹の事全部なくしても、ただ更ちゃんの事が好きだ」
「わ、たしも…」
彼女の言葉を飲み込むように、口を塞いだ。
更ちゃんは驚いたのか、初めは身体中に力を入れていたけれど舌を絡ませ、歯列をなぞっていくと喉から高い声が漏れた。
その声に自分の男の部分が刺激される。
身体から力が抜けた彼女を支えて抱き上げ、彼女の部屋へ向かった。
部屋に入ると真っ先に開けっ放しの窓が目に入って思わず説教をしたくなったけれど、とりあえず今はほどほどに留める。
更ちゃんをベッドの上に下ろして、手を握り、視線を合わせた。
自分の気持ちがちゃんと彼女に伝わるように。
自分の気持ちを言葉にしていく。
一言一言、今自分の中にある気持ち全てを誤魔化さずに言葉にした。
彼女が欲しいと。
光樹が愛した彼女まるごと、光樹を愛する彼女全て。
更ちゃんが欲しいと告げた俺に、彼女は涙で濡れた顔で小さく笑ってくれた。
弟に許しを請うように、二人の誓いの印に口づけを落とす。
「好きです…瑞樹さんが好き」
「俺も、更ちゃんが好きだよ」
口にすればこの気持ちは本当にシンプルだった。
彼女が好きだ。
本当にただそれだけだった。
彼女にとっての光樹を超えられなくても
人に眉を顰められるような関係だとしても
なんでもいい。
俺は彼女が好きだ。
押し込めて、隠して、見ないようにしてきた自分の感情を口にしたら、もう堰き止められずに溢れ出す。
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