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するとその時、リリーの暗闇を映していた目に一つの”光”がぱっと瞬く。
「……っ! 今のは……っ!?」
前方の方角に、明かりが灯るのが見えた。それはまるで、蝋燭のように瞬く光だった。
「まさか……人? でも、この森は禁じられているはず……私たち以外に人がいるはずがない」
「ん~……どうしたの……? ぇ……うわっ!?」
不意に起きたハボックを抱える腕をぱっと放し、リリーは今見えた光が他に見当たらないか辺りを見渡す。
けれども、やはり見えているのは暗闇ばかり、見渡せど、見えてくる光はない。
「気のせいな訳、無いはずなんだけど……」
「もう……いきなり降ろさないでよ…………あれ? ねぇ、リリー。あれなんだろう?」
ハボックが後ろでそう呟くと、リリーもすぐに気が付いた。
さっきと同じ”光”が今度は違う方角の向かいに明るく灯っている。今度は消える気配がない。
「あれだ……」
「ねぇ……リリー。今僕たちって“森”にいるんだよね……? てことは魔物に喰われちゃうんじゃ……っ」
「しっ。静かに」
「むぐっ!」
今頃になって森に入ったということを思い出しているハボックの口を強引に塞ぎ、二人は身をかがめる。息を潜めると、遠くの空中に浮かぶ光の様子をリリーは伺った。
しかし突然、光は何かに反応を示すようにぱっと瞬いた。そして、その場で留まっていた光がいきなり、ものすごい速さでこちらに向かってきた。
「っ……! 気づかれた……っ!」
「へっ?」
「走るよ!」
「え、えっ! ちょっとっ!?」
呆気に取られているハボックをさし置いて、リリーは全力で走る。同じくハボックも遅れてその後ろを走り出す。
だがしかし、二人が走るよりも早く、”光”はあっという間に二人の傍まで追いつき、そのまま追い抜いて二人の行く末にピタリと立ち止まった。
「あれぇ? 人間じゃん」
「なっ……!?」
「何……っ!?」
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