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EP.18 その頃――。
木々の葉が擦れあって、カサカサと鳴る音がしている。時折、そんな葉の音に紛れてピチピチという鳥のさえずりも聞こえてくる。のどかな空気だ。聞いているだけで不思議と気持ちがいい。
(…………あれ、おかしいな。私、いつ目を閉じたんだろ)
耳に入ってくる自然の音を聞いていると、ふと思った。さっきまで自分はとても明るい場所にいた気がするのに、視界はいつの間にか暗転していて、今では真っ暗にチカチカとした残像が瞬いているだけだ。
ーーゆっくりと、リリーは目を開けた。
見えたのは明るい森の風景。上の方まで高くそびえた木々の葉っぱはひしめいて、まるで生きているかのように枝葉が波打っている。
木葉を透かして差し込む日差しは眩しく、あちらこちらには木漏れ日が差し込んでいた。側にはたくさんの雑草と苔が生えており、手足を動かすとわさわさとした感触が伝わってくる。
「……どこ、ここ」
目を開けて数分、リリーは見えている森の中を見つめた。いつの間にか、見知らぬ場所に来てしまっている。見てわかる通り、黒茂ノ森ではない。ここは一体どこなのだろう。
「……あれ? そうだ体が!」
はっと、リリーは我に返る。そういえば、さっきまでよくわからない体験をしていたのを思い出した。
急に周りが真っ暗になったかと思えば、いきなり視界が晴れて、体の自由が効かなくなったあの時。確認すると、今はしっかりと体が動かせる。勝手に動いていた口も元通りだ。
「よかった……」
ふぅと、息を吐く。よくよく考えてみれば、あの出来事が起きる前は主人と一緒に部屋にいたはずなのに、周りに目を向けてもあの太々しい主人の姿は見当たらない。彼はどこへ行ったのだろう。
「私、一人なのかしら……」
来てしまった理由はどうであれ、自分一人だけとなると心細い。
考えてみればここは森の中だ。辺りには鬱蒼と草木が生い茂り、足場はどこもかしこも凸凹と悪い。軽い怪我ではいざ知らず、気を抜いてしまえば深い怪我を負うことになるやもしれない。もっと言えば、植物があるのならば当然にそれを食べる獣がいる。その獣がいるとなれば、それを食べる存在も必然といるはず。ここは開けていて見通しがいい。同じ場所に長居をすれば、それと遭遇する事だって重々あり得る。
(ハボの事も気になるけど、今は安全な場所に行かなきゃ……)
不安ではあるがこの場所に長くいすぎるのは良くない。危険の少ない場に身を移したほうがいいだろう。もたれていた大木の根本から体を起こすと、リリーはその場に立ち上がる。するとーー。
「どういうことだ」
「!!」
背後からいきなり低い声が響いた。びくりと肩を動かして、リリーはバッと後ろを振り返る。するとそこには、大木の陰からこちらを見つめる主人の姿があった。
「あんた……!」
主人がいた。自分一人だけではなかったようだ。ほっと、思わずリリーの口から息がでる。だが、安心するよりも先に主人には聞きたいことが山ほどある。
「あんたどうして……」
「どうやったんだ」
「……は?」
そう思いリリーが問いかけようとすると、それよりも早く、逆に主人がリリーに問いかけた。
「どうやったって……」
「あの状態から自力で回復するには難しい。一体どんな手を使って目を覚ましたんだ」
…………何の話をしているんだこのオッサン??
と、リリーは顔をしかめる。主人も大木の陰から出てくると、早足に歩み寄ってきた。
「ちょ、ちょっと待って! 何のこと?」
「お前の身体の事だ! さっきまで瀕死だったというのに……おい、身体を見せろ」
「!?」
言いながら、主人がリリーの腕を掴み上げる。そして空いている片手でリリーのワンピースをめくり上げようと手をかざしてきた。すかさず、リリーも空いている手でワンピースの裾を抑える。
「何すんのよ!!?」
「おい、手を退けろ」
「どけろじゃないでしょ!! 何すんのよ!??」
「お前の身体を診る。退けろ」
「どけれる訳ないでしょ!! 誰がどこぞのオッサンに自分の裸見せんのよ!! 変態!!」
「っ……いいからさっさと服を脱げ!!」
と言うと、主人は乱暴にリリーのワンピースを掴み上げて、そのまま上にひん剥いた。
「きゃあああああああああ」
ーー@ーー
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