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EP.19 ガヴーの案内――。
「ここはヤリをおくとこだ。あぶないからちかづくの、きをつけろ」
案内された場所に、先端が尖った木の棒がズラリと並んでいる。淡々と説明をしてくる少年。目の前の槍の山に目を点にするハボック。
「えっとぉ……すごいね……」
「つぎ、こっちだ」
「あ……うん……」
少年に腕を引っ張られながら、ハボックは後ろをついて歩く。
先ほどにこの村の長である“シャカム"と対談を果たしたハボックだが、話を終えてそれからずっと、この少年ーー"ガヴー"に村のあちこちを案内されている。
今案内された場所は六つだ。水汲み場と、飼育されている動物たちがいる場所、排泄をする場所、畑のような場所、木彫り場と呼ばれる木材を削り取る場所、そして、今案内された槍置き場だ。ただし、少年ガヴーによるそれぞれの場所の説明は、さっき見た通り、全て同じ調子で淡々と言うだけで、すぐに次の場所に案内される。
「……ねぇ、ガヴー」
「なんだ」
「そろそろ休憩しない……? ちょっと僕、疲れてき……」
「ついたぞ。ここはアレタのイエだ」
ハボックの言葉を遮り、ガヴーが立ち止まったのは、村に建てられる藁草で出来た三角の物体の一つの前だった。
「え」
「あっちはグンザとエラのイエ。そこがハーテマのイエ、ハーテマはヤハトとミエサとメノとすんでる。そんであそこは……」
と何かを語り出すと、次から次へと村に密集する三角の藁家を指差すガヴー。まさかと言いたいが、どうやらガヴーは村人たちの家を紹介し始めたようだ。一から。
「……でエーニャのイエはあれだ。エーニャは……」
横目でガヴーを見る。最初と変わらず、やはり同じ調子で淡々と説明している。表情も変わらない。口だけ動いているような印象も受ける。まるで自動的に動く人形のようだ。
「……のイエだ」
すると、そのうちにガヴーの口がピタリと止まった。説明が終わったらしい。ほっ、とハボックの口から息が出る。半ば、何かの呪文のように聞こえていたガヴーの言葉が止まった事に歓喜を覚えた。
「そんじゃ、つぎいくぞ」
「えっ」
安心していると、またガヴーが腕を掴んで引っ張ってくる。引っ張られた先には沢山と見えている他の三角藁家の密集する様子。まさか……。
「まだ、あるの……っ」
ガヴーに引っ張られながら、ハボックは目の先に広がる藁家の群れを見つめると、ガヴーからの呪文説明が待っている事を悟ったーー。
ーー@ーー
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