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Ep.3 森の中で――。
「いやだぁああああああああああっ!!」
高々と生え立つ黒い木々の合間、暗闇が広がる森の中で子供の大きな叫び声が響き渡る。
その声の持ち主は先ほど、この黒い森に足を踏み入れた少女に首袖を掴まれながら引きずられている少年によるものだ。
少年――ハボックはこの“黒茂ノ森”の入り口から少女――リリーに引きずられてから未だに彼女の手を振り払おうと躍起になって暴れまわっている。けれども、リリーのハボックの服を掴む腕はあれからそれなりに時間が経っているのにも関わらず、手放すどころか緩んだ様子もない。ただ黙々と彼を引きずりながら黒い森の茂みの中を進み続けている。
そうして二人が森を進んで幾何か経つと、後ろで癇癪を起こすハボックにリリーが呆れて息を吐いた。
「ねぇ、いい加減に諦めたら?」
そんなリリーの一言に呼応するように、ハボックは一層腕や足をじたばたと振って暴れだす。
「ていうか、あんた。そんな抵抗できるぐらいなら、どうして森に行くまでの道をあんな風について来てたのよ」
黒い森に着くまでの道のり、リリーは手杖を突きながら息を荒らしていたハボックの情けない姿を思い出した。あんなに疲れた様子でまいっていたというのに、あの様子はフリだったのだろうか。
しかしそう思っていた矢先、暴れまわっていたハボックが突然腕と足をだらりと地面に垂れ下げ、過呼吸でも起こしているようなヒューヒューとした音を出し始める。
「……そ……そんなっ……ぜぇ……はぁ…………たいりょ……く、なっ……はぁ、はぁ……」
やはりハボックには体力がなかったようだ。
「あぁ無理しなくていいわよ。しばらく黙ってなさい」
「そ……そんぁ訳……はぁ、ぃかな…………っ!」
最後に抵抗しようとしたのか、ハボックは片腕を振りかざそうと上へと上げた。しかし腕はへなへなとそのまま地面に落ちさる。
「……はぁ……はぁ…………」
「だから言ってるのに」
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