【あなたが最後に捨てるものは】

2/11
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 電車に揺られながら、都会とは思えない平行線の視界をぼんやりと眺めていた。  変わらないな、この風景は。  もっともこの電車にってこの風景を見ること自体、一ヶ月振りなのだけど。  ───一ヶ月。  経ったの? という人がほとんどだと思う。  けれども私にとってこの一月は、人生三十年以上生きてきた中で、一番に長かった。  突然、連絡が取れなくなった彼。  LINEもメールも当然電話も通じず、Twitterに至っては私をFF解除───フォロー、フォロワーの間柄を解除───した上でなぜか鍵付きアカウントにされていたので、内容が更新されているのかどうかも分からない。  そもそも彼のフォロワーもフォローも人数がゼロになっていたので、彼を経由して知り合った人達も、不審には思いつつ、しょせんTwitterなんて個人用SNS、辞めたくなったら辞めるのも本人の自由だからいいんじゃない、と、彼一人の消失など気にも止めてないようだった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!