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 催眠術を使っても彼女に挨拶することさえできなくなってしまったのかもしれない。俺があんな催眠術をかけてしまったから。英里紗をキケンな目に合わせるようなことをしてしまったから。  それでも謝らなければならないんだ。これしかないんだ。催眠術を使うしか。 『目の前のキミの隣に座る』 「となりに、すわる……」 「あれ、英里紗じゃん?」 「あっ、洋平、ここに座ってたんだ……」  ぎこちなくも俺は英里紗に話しかけた。  食堂で。  そういえば、食堂でこうして英里紗に会うのは初めてかもしれない。いつも彼女は女子グループと教室で食べてるし。俺だっていつもはいつもの面子と中庭で食べる。  でも今日に限っては昨日の一件で憔悴しきっている俺が1人で食べると言って食堂に来た。  英里紗も食堂に来ていた。 「ごめん、移動したほうが良い?」 「いやいや、別にそんなことしなくても」  彼女は立ち上がる動作をやめて、また座り直した。  黙々と食べ始めるカレーライス。  彼女もカレーライスを頼んでいた。  こんなに味のしないカレーライスは初めてだ。まともに味なんて楽しめやしない。  つい最近までずっと話していたのに、ここに来て急に話さなくなったら、そりゃあ気マズい。あんなことをしなければ、催眠術なんてあのとき使ってなければ……。今だってきっと楽しく話してただろうに。     
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