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序章
「さいみん、じゅつ」
俺は洋平。高校2年。最近焦ってる。
高校2年になれば焦るだろう。俺にはカノジョがいないからだ。
高校1年の最後のほうにもなれば、学生生活に慣れてきたのか、クラスメイトや同じ部活のヤツらには続々と恋人ができていた。俺がいつもいる面子だって、カノジョがいないのは俺だけだ。だから不安とか焦りとかそういったものに追われる日々なんだ。
どうしてもカノジョが欲しい。中学の頃までずっと生活を共にしていただったダサい服やらアニメ鑑賞やら寝癖頭やらとはおさらばした。代わりに、休日のファッションには気遣ったり、洋楽を聴いたり、髪型を流行に合わせたりということをしていった。それでも俺にはカノジョができなかった。あと何が足りなんだろうな。
この1年ちょっと、焦りに焦った結果、やはり俺はズルをしなければならないと思うようになった。それが今である。「これだけはやるまい」と思っていた頃もあったが、けっきょく俺にはこれしかないらしい。
スマホを開く。そして「催眠術」と検索窓に打つ。
数百万件というページ数の結果が出てきたのはおよそ1秒とかからない。上からひと通りリンクに触れてみる。
だいたい情報は出揃った。あとは「英里紗」が眠たそうになったタイミングを狙うだけだ。
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