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そしてまた同じ罪を重ねるのさ。この前手に入れたばかりのズルいやり方で。
お前はまた使うのさ。催眠術によってキケンな目に遭わせておきながら。それによって気マズくなった相手に謝るために、また催眠術を使うのさ。
愚かなお前は催眠術しか使えない。そんなものを使ってでしか相手と関わることができない。全く愚かだ。使ってなんとかしようとする。でもそれはお前が望んだことなのか?
ズルに手を染めて、ズルをしていたことを告白するためにまたズルをする。お前の愚かさには呆れ果てたよ。
自分にそう言い聞かせながらも、けっきょく、また催眠術をかけることにした。それが選んだ道だから。
『目の前のキミと話す』
「キミと、はなす……」
「ごめんね」
と口を開いたのは英里紗だった。
「お礼も言えてなくって」
「お礼?」
「うん。だってさ、昨日、棚から落ちそうになったわたしを洋平が助けてくれたのに。そのまま帰っちゃったから。わたし、なんてサイテーなことしちゃったんだろって、後になって悔やんだ」
彼女は俯きながら話した。
「良いって。水臭い。英里紗がケガしてなきゃそれで良いんよ」
「……ありがと」
「それに俺だって危ない仕事を英里紗にさせてさらに喋りかけちゃったし」
「ううん、そんな、洋平が謝ることないってば」
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