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† 1 †
英里紗、というのは俺が密かに好意を抱いている女の子だ。同じクラスの隣の席にいる。
4月からいつも彼女が隣の席に座っている。本物の美少女だ。顔も容姿も性格も声も好きだ。俺はそんな好きな人を眺めることしかできない。いつもタイミングが悪くて隣の席だというのに挨拶できずにいる。
カレシは……。いるかもしれない。でもまだ訊けてない。
それにいてもいなくても、アプローチをかけていかないことには何も始まらない。だからこそ俺は催眠術をかけてゆくんだ。
『目の前のキミに挨拶をする』
「あいさつを、する……」
「おはよう」
俺は手のひらを大きく広げて登校してくる英里紗に挨拶をした。
いつも朝は眠い。起きて朝食を食べて髪をセットしてというルーティーンを15分で済ませてすぐに高校に向かうからだ。だけど英里紗をカノジョにするためなら、オチオチと眠そうになんかなっていられない。学校は早く来るようにしなきゃだし。生活習慣を見直す必要がある。
「おはよう。今日は早いね。どうして?」
「いやあ、生活習慣を見直そうと思ってさ。早起きするようにしたんだ」
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