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「あれって何調べてるの?」 「いろいろだよ。最近のファッションとか流行の髪型とか最新の洋楽とか。あとそれから……」  と言おうとしたところで俺は口を噤んだ。  危うく俺が「催眠術を使っていること」をばらしそうになった。  英里紗はとても興味津々な表情になって、 「それからそれから? 何隠してるのよー?」  と俺に問うたけど、何かこの状況を誤魔化せる方法は思いつかないだろうか。 「まあ、そんな大したことじゃ……」 「おいお前ら!」  と教壇の方から射られた声の矢に俺らは刺され、俺の言葉には瞬間冷却スプレーが吹きかけられた。背筋がいっしゅんにして凍てついた。 「今は授業中だぞ」  と国語科の飯田(担任)に言われてしまった。シャクだ。おかげでクラス中、クスクスとした笑い声でひしめいている。  それでも英里紗と話せる機会を持てたんだ。いやあ、ホントに楽しかった。今度はもっといろんな話をしたいなあ。  英里紗と話すようになってから1週間。俺と英里紗の関係は1週間前と比べたら間違いなく大きく変わっている。  挨拶もしなかった関係から、休み時間、いっしょに話すくらいにまでなった。  でもそれでは友達止まりじゃないか。     
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