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「さあ、後はこの棚から降りるだけね」
と言って英里紗が片足を棚から離したしゅんかん……、
英里紗が、棚から落ちてきた。
「危ないっ!」
急いで俺は英里紗を抱える体勢に移った。どうやら間に合ったようだ。
彼女の柔らかな身体が俺の腕に落ちてきた。彼女は無傷だった。
いっぽう頭に机を盛大にぶつけた。それに床に腕を擦った。
「だ、大丈夫……?」
「誰が器用だよ。全く」
「ご、ごめんなさい」
夕日の赤なのか火照った頬の赤なのか、そんなことは定かではなかった。
けど彼女がお姫様抱っこから降ろされたしゅんかん、急ぎ足で立ち去った教室に俺がぼーっとした時間を過ごしたことだけは確かだった。
あんな催眠術をかけてしまったから、英里紗をキケンな目に合わせてしまったんだ。もう少しで英里紗のキレイな顔、キレイな容姿に傷をつけてしまうところだった。
でも謝れていない。謝るためにまた催眠術をかけることを考えてしまった。
『目の前のキミが気になる』
「キミが、きになる……」
翌日。また催眠術をかけた。
ぷいっ、と視線を逸らされたとき、俺は不安になった。もう英里紗は俺に話しかけてくれないかもしれない。そう考えると俺はツラくて仕方がなかった。
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