第二章 『何かが始まる時』

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 この日私は半休を取って、学生の頃からずっと行き続けている大学病院に、一ヶ月に一度の検診に来ていた。 「こ、んな、状態……続いても、やっぱり注射もできないんですか」 「そうねぇ……都さんの場合は、調子が良い時は普通に話せるから、かえってその状態がボイストレーニングしかできないのよね」  喉頭ジストニアの対処法としては、手術と、ボトックス注射がある。  ボトックス注射とは、喉に直接毒素を打ち、喉の筋肉の異常な緊張を緩める効果があり、その効果は二、三ヶ月。  効果が切れる頃にまた注射を打つ……という流れになるのだが、私の場合は注射もできずややこしい。
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