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よいしょっと芝生の上に腰を下ろすと、一緒に走ったキャプテンに声をかけられた。
3年生の、高柳智之。
うちの大学は、伝統的に3年生がキャプテンになる。
「そうですかね」
「なんか前よりひどくなってっぞ」
偉そうな表情で、高柳さんは先輩ぶって鼻を鳴らした。
「そうですかね」
「まあ、あれだ」
一瞬、沈黙して、
「まあ…、なんだ。まあ頑張れや」
いいセリフが思い浮かばなかったらしい。
高柳さんは基本的に残念な人である。
キャプテンとアホを両立する人なのだが、そのスプリントは素晴らしく、全国的にも有名な選手だ。
去年の日本選手権では決勝6位。
シンプルに言えば、日本で6番目だ。
むろん、トップアスリートと呼んでも差し支えないだろう。
僕なんかとは大違いだ。才能が違うのである。
(才能、か…)
僕も、小学校のころは神童と呼ばれていた。
意気揚々と中学校に入り、3年のときに全中で優勝。
中学歴代8位の10秒79をマークした。
将来、世界陸上、そしてオリンピックに出る。
漠然とそう思っていたし、きっとそうなると思っていた。
しかし、高校に入ってからはまったく伸びなかった。
分かりやすく壁にぶつかり、中学校のときに出した記録すら更新できず、結局、東北大会の決勝7位が最高で、インターハイには一度も出場することができなかった。
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