向こう側。

4/5
前へ
/5ページ
次へ
教室の落書きのある机をなぞって 誰もいない廊下を歩く。 理科室のホルマリン漬けは興味を持った。 音楽室のベートーヴェンたちは怖かった。 体育館のボールは痛いから好きじゃなかった。 学校で好きな場所は、屋上だった。 誰にも邪魔されない静かに過ごせるところ。 私は、屋上の柵を乗り越え、立つ。 吹き抜ける風が気持ちいい。 ここを卒業したって何も変わらない。 だって、世界が変わらないから。 私は、最期に呟く。 この優しくない世界に 「さよなら。」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加