60人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはよう。和花ちゃん」
両手に大きなゴミ袋を持ち、部屋から外へ出た途端、声をかけられた。横を見ると、同じ造りのドアから出てきた隣の部屋の住人が、鍵をかけながら私を見ている。
「あ、おはようございます。橘さん」
「すごいゴミだね。引っ越しでもするの?」
私は苦笑いしながら答える。
「いえ、部屋の整理してたらこんなになっちゃって……普段物を捨てられない性格なもので」
小さく微笑んだ橘さんは、私の手からゴミを一袋取り上げた。
「ひとつ持つから、ちゃんと鍵閉めな」
「すみません。ありがとうございます」
私は持っていた鍵で戸締りをすると、廊下を歩き出す見慣れた背中を追いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!