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 他愛もないおしゃべりをしながら歩いていると、すぐに学校に着いてしまった。すると門のそばに立っていた女の人が、こちらに向かって駆け寄ってきた。 「おはよう、(たける)」  橘さんを健と呼ぶその人は、橘さんと同じ四年生で橘さんの彼女の美玲さんだ。 「おはよ、和花ちゃん」 「おはようございます」  美玲さんは私にも声をかけてくれ、にっこりと微笑んで言う。 「ここから見てたら、あなたたち本物の兄妹みたいだったよ。お似合いね」  なんて答えたらいいのかわからない私の前で、美玲さんは橘さんに向かって手を伸ばす。 「さ、行こう、健。じゃあまたね、和花ちゃん」  美玲さんは橘さんの腕を組むと、それを引っ張るようにして歩き出す。 「それじゃあ、また」  振り返った橘さんと目が合った。私は小さく微笑んで手を振る。
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