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あのころ、僕には、最高の相棒がいた。
彼は、いついかなるときも僕を決して裏切らず、どんなときだって傍にいてくれた。
うれしいことや楽しいことがあったときは、一緒に爽やかな風を切って走り、悲しいことやツライことがあったときは誰よりも僕に寄り添い慰めてくれた。
余計なことは一切喋らない、ただ僕の心に寄り添ってくれる本当にいいヤツだった。
ソイツの名前は、“自転車”。
青いメタリック塗装が施された、とってもカッコいい自転車だ。
三輪車、コマ付き自転車、コマを取り外したコマ付き自転車と乗って来て、ようやく買ってもらった“オトナの自転車”なのだ。
すくなくとも当時の僕は、そう思っていた。
実のところ、最初からコマが無いだけの子ども向け自転車だったのだけれど。
そのときの僕には、それだけで充分だった。
ずいぶんと自分が、“オトナ”になったような気がしたものだ。
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