最高の相棒

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 それからというもの、僕は、いつでもその自転車と一緒にいた。  とくに、誕生日プレゼントとして贈られたその年の夏休みは、友だちと野球をするグラウンドに、最寄りの市民プールに、駄菓子屋に、ゲームセンターに……とにかくどこへ出かけるにも、自転車に乗って出かけた。  果ては、お盆に遠く離れた父方の祖母の家に行くときにも、自転車を持っていくと言って聞かなかったほどだ。  ……結局は、両親に諭されて、断念したんだけど。  そうして夏休みが終わり、学校が始まっても、放課後帰宅すると、僕はランドセルを放りだし、真っ先に自転車を置いている物置へと向かった。  それからまた自転車に乗って、どこかへと出かけるのだ。  目的地があるときもあれば、無いときもあった。  無いときは、ひたすらその辺りを走り回った。  僕の住む街は、北をなだらかな山に、南を穏やかな海に挟まれ、横長に広がっていた。  家のある山手から、南の海側へと急坂を自転車で一気に下る。  そのときの、全身で風を切る感覚がたまらなかった。  潮風が届くには少々遠いけど、正面から爽やかな風が、ふわり体を包みこむように吹きつけてくる。  僕は、街の息吹を胸の奥深く吸い込みながら、凪いだ青い海に浮かぶ外国船をまぶしい陽光の合間から透かし見た。  ささやかで、だけどこの上なく幸せな瞬間。  こんなふうに、僕と自転車の蜜月は、いつまでも続くような気がしていた。
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