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いきなり無茶ぶり婚約者様
「まったく、信じられませんわ」
レイピアに付いた血を拭いつつ、フィアが口を尖らせた。傍らにはたった今倒したモンスター、デスリザードが倒れている。
人ほどの大きさもあるドクトカゲだが、彼女が苦戦する様子はほとんどなかった。さすがに姫騎士(※非公認)を称するだけはある。
「『古文書』と状況がまったく違うじゃありませんの。お前、きちんと本物を持ってきたんでしょうね?」
髪を軽く手で弄ってから、彼女は私をにらみつけてくる。左右の側頭部で縦巻きにしてあるのはとても興味深く、今度やり方を教えてもらいたいとさえ思うほどだ。
私は降参、といった感じで両手を上げ、ささやかに反論してやった。
「所詮一介のメイドですから。その筋の人間ではないので、どうにも。そもそも入り口時点で『レンガ造り』と書かれていたのに、入ってみたら土壁。……階層が変わればさらに別の風景が広がる。ここに来るまで、すでになんども『古文書』の記述と違う部分がありましたよ、フィア様」
「どうなっているのかしら。敵が違っていただけならともかく、内装まで異なるだなんて……」
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