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私の言葉が聴こえているのかいないのか、フィアは考え込むように独り言をつぶやき始めた。彼女なりにしっかり考えているようで、私はそういう部分には素直に感心してしまう。
とはいえ、直後にかけられた言葉にはさすがに閉口せざるを得ない。
「まあ、なんにしても。これで当面の食材は手に入ったのではなくて?」
「は?」
私が首をかしげると、正面に立つ金髪の女騎士もまた、心底不思議そうに首を傾げだす。
「ほら、これ」
指さしたのは、たった今倒したデスリザードの死体だ。首筋から血を流しており、目はすでに白濁し始めている。
「それを、どうしろと?」
再び問うと、ついにフィアの顔が曇った。
「メイドはどんな食材も捌くものでしょう? 早く準備なさいな」
「……あの、正気ですか?」
メイドへの謎の信頼感はこの際、脇に置くとして。
この国がドクトカゲを食うような文化圏だと思っているのか。というか、モンスターを平然と食うのはそれなりに限られた国々なのだが。
私はどうしたものかと唸り、同時に深く反省した。護衛を頼む相手を間違えてしまったらしい。いや、そもそも彼女についてきてもらうべきではなかった……。状況に悩んだ末に思い切った決断を下すと、しばしば間違えてしまうこともあるようだ。
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