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「あっ、大事な、大事な話って?」
「ああっ、忘れてた。
そうそう、昨日の逃亡犯」
「昨日の逃亡犯?」
「うん。お前にビールかけ逃げした女。
身元判明!」
そう告げると、遼は手帳の一枚を破り楓に手渡すと再び走り始めた。
走りながら振り返る遼は、
「楓っ。あとは、被害者の判断に任せる」
そう告げると、右手を軽く上げ敬礼をしながらビルの角を曲がり姿を消した。
楓は手のひらのメモを開け、
見覚えのある遼の字で書かれた文字をただ見つめていた。
桜井のあ
090-0000-0000
犯行を起こしたものは必ず現場に戻る――。
警察官、遼の口癖だった。
遼は今朝、昨夜の店舗へ連絡を入れ確認していた。
桜井のあが、あの夜店員に連絡先を伝えていた情報を得、
被害者の楓へ伝えたのだった。
「桜井 のあ……
あの子、のあって言うんだ」
楓は、暫くの間その場を動く事無く、
ただ、手のひらのメモに書かれた彼女の名前を見つめていた。
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