虹 ― Rainbow ―

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 あの時、三人の女性は結婚式の二次会の帰りで、 楓に女性を紹介するために、遼が二か月も準備をかさね ていたと聞いていたが、彼女たちの話に違和感を感じた。 「あの、松坂楓さんの彼女としてお会いになったんじゃ?」  三人の女性は、栞を小馬鹿にするように笑いだした。 「ごめんね。私達にはちょっと頼りないかな。 実はね。私達、皆遼狙いだったの」 「えっ!?」  あの日、同僚警察官の結婚式があり、式には遼も参加していたが、 二次会は大切な親友の誕生日を祝うため遼は欠席していた。 遼目当ての女性警官達は、遼のいない二次会に退屈したのか、 強引に遼の居場所を聞き出し、遼に接近しようとしていた。    楓に初めから興味など全くなく、遼と会うついでに、 彼女いない歴30年の親友の誕生日を祝いに、 冷やかしで訪れていただけだったらしい。 「あれっ。彼女計画の事しらないのっ?」 「ああっ。あのさぁ。お前ら警官だろ。 もうちょっと、秘密順守してくれなきゃ」  困った表情を浮かべる栞を気にしたのか、 一人の女性が、二人に声をかけ扉を開けた。 「これ以上いたら、鬼警官になるから撤収しましょう」  遼の不貞腐れた表情を気にしてか、彼女たちは病室を後にした。 栞は、廊下に出ると小さくお辞儀をしながら彼女達を見送っていると、 一人の女性が小走りで駆け寄って来た。 「食事の時間にごめんね。 遼の身体も心配だったけど、みんなあなたの事も気になってたの。  くだらない女なら、奪い取るつもりで来たけど、 お会いしてよく分かった。 みんなが少しそっけない態度を見せたのは、正直あなたに嫉妬したから――。 ごめんね。  栞さん、幸せになってね」  先程までの目力を感じる態度と異なり、二人を温かく見守るような 優しい口調で栞に言葉をかけていた。  廊下の角で曲がるとき、三人の女性は栞に頭を下げていた。 それは、遼の事を託すように栞の目には映っていた。 見舞客を見送ると、栞は遼に駆け寄り計画の事を問い詰めた。 「参ったな。サツキに口止めされてるから……」  遼曰く、敵を欺くには味方から――  その言葉の通り、遼はこの計画を洋介にも話しておらず、 サツキもまた、栞に話していなかった。  栞は、遼が横になるベットに腰掛け、 そっと、遼に口づけをした。 「ねぇ。 おしえて――」  遼は、即答した――。 「えええ―――っ!」
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