虹 ― Rainbow ―

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 そっと、やよいの身体を背後から抱き寄せ サツキはやよいに問いかける。 「サツキお姉ちゃんが…… やよいちゃんの本当のママになってもいいかな――」  やよいは、つぶらな瞳に涙を浮かべていた。 「ママになってくれるの?」 「ほんと、ほんと……」  やよいは、零れ落ちる涙を我慢するように 鼻をすすりながら、力強くサツキの身体を抱き寄せていた。 「ママっ。サツキままっ」  二人は泣きながら、互いの温もりを感じ合っていた。 「ガチャンッ」  外から、洋介が自転車を止める音が聞こえて来た。 「あっ、パパだっ!」  サツキの手を引きながら、やよいは玄関へと駆け寄る。 「ただいまっ。 お外に出てごらん。すっごい綺麗なお月様だぞっ」  透き通った雲一つない秋空に、まぁるく大きなお月様が、 祝福するかの様に、三人を包み込み明るく照らしていた。 「パパ、おかえり。お帰りなさい。洋介さん」 「あっ、そうだ。 帰りに遼の病院見舞いに行ったらさぁ。 何だかよく分からないんだけど、 栞ちゃんに計画がバレてしまったって、 遼が意味不明な事言っててさぁ。  二階堂先生に変な注射でも打たれたのかな?」  それは、遼から洋介を返してのメッセージだった。 「もうそろそろ、打ち明けてもいいかなっ」 「えっ、何が?」 「実はね――」  サツキは洋介の耳元にそっと近づき、 小さな声で、計画を伝えた。 「へぇ、あの時の―― そうだったんだ。 うん? ええええええええっ!!!!」
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