Indigo  ― 藍 ―

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「もし、この途切れたインクの量が空を舞う飛行機の燃料だったら? もし、長時間にわたる手術で人命を守るために必要な輸血血液の量だったら? その患者が、君たちにとってかけがえのない存在だったら? 代替品を用意する暇なんてないんだよ!」 少し強い口調で、向井は問いかけた。 「そこで必要なのはInternet of Things:IOT改革だ。 物がインターネットを経由し、重要な情報を事前に察知し伝えてくれる。 この会議の前には、もうすぐマーカーのインクが無くなりますよと、 メール送信される訳だ」 そう伝えながら向井は、スーツのポケットから真新しいホワイトマーカーを取り出した。  向井部長の提案によると、クライアントへ提案するためまずは自社内で 具体的な取り組み事案を結果として残したい要望だった。 「分かりました。それでは、私が取りまとめ致します」 真っ先に声を上げたのは、社内でもやり手の岡村だった。 「いや、この件は、桜井、お前に任せようと思っている」 「えっ」 「ははっ。部長、IOTすら分からない無知な桜井には荷が重すぎますよ」 女性社員に何が出来るのかと、口にはしないものの足を組み対応する岡村に 対し向井は話を続けた。 「その通り。この件に対しては素人だ。 だが、だからいいんだよ。 中途半端な知識を得た連中が手をかけるから中途半端な結果しか生まない。 これは、ビジネスだ!」 「……」 「あっ、あの、私、岡村さんの言われる通り本当に無知で、 ゼロからになりますが……」 「その件については、社外からプロを一名用意させる。 経験を積んだ本物のプロと、素人がタッグを組んでこれまでに無い発想で 取り組んでくれ。 桜井、これは業務命令だ。 お前に選択肢はない。 それと、山崎、桜井のサポート役にまわってくれ。以上」 「あっ、はい、わかりました」
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