Indigo  ― 藍 ―

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「はぁっ……」  昼休み、サラダサンドを頬張りながら一人ため息をつくのあのテーブルに 山崎茜が現れた。 「のあ。すごいね! あの岡村の表情は見ものだったな。 新しいブランド財布のご利益だね」  山崎茜、桜井のあと同期入社の女子社員だ。 性格はとても明るくいつも前向きで、のあにとって大切な親友でもあった。 誰よりも几帳面でこまめに仕事をこなす面もあり、 今回のあのサポート役に任命された。  山崎の苗字から、やーやんと呼ばれている。 ブランド財布は、この秋新作の限定財布でのあが自分へのご褒美の為 先週購入していたものだった。 「もーっ。やーやん助けてよ!」 「任せてください。のあさんの為ならどこまでもお供しますよ。 タマゴサンド頂き!」 「あーっ! 最後の楽しみに取ってたのに」 「さっき部長からメール入ってて、 早速明日、社外の担当者が来るみたいよ。 残念ながら、女みたいだけどね。 あーっ、社外の男と関わるチャンスだったのにっ」 「やーやん、彼氏いるじゃん!」 「あのね。デザートは別腹なの、別腹。 彼氏いたって、トキメキたいもん。 へへっ。 そうそう、名前は松坂楓さんって書いてあったな」 「楓、かえでか、可愛い名前だね」 「でも、すっごい巨漢のおばさんだったりして、 あれ、巨漢って男に対して使う言葉だっけ?」 「もーっ、そんなことどうでもいい。 やりたくないよーっ」    二人の賑やかなやり取りを、自動販売機の陰から覗く一人の男がいた。 「くそっ、何であの女なんだよ! 馬鹿にしやがって」 「あっ、ここにいたんですか? 岡村さん、山口課長が探されてましたよ」 「あっ、すぐ伺います」
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