Indigo  ― 藍 ―

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 久々の再会だと言うのに、静まり返る個室の中で生ビールと パフェのグラスを合わせ乾杯する異様な光景が繰り広げられていた。 「なんでみんな自分の事ばっかりなのよ! 普通、若い子に譲るでしょ! 甘いもの苦手な女子なんか滅多にいないじゃないのっ! あのお店のエクレア、並ばなきゃ買えないのに、 もっと美味しそうに食べなさいよ、もう! 何よ! 太っちゃうわぁって、 食べなきゃいいじゃん、もうっ!」  栞は大の甘党だった。 ゴミを回収しながら目にした有名洋菓子店の差し入れ、 甘い匂いが鼻に残ったままだったのか、 生ビールのジョッキよりも大きなグラスに入ったイチゴパフェを ペロリと食べつくした。 「そうよそうよ! 大体あいつ何なのよっ。 確かに悪いのは私だけど、何もこんな形で現れなくたっていいじゃん! それに、普通その場で怒るでしょっ! ぼーっと受け入れるから、そう思っちゃうじゃない! 絶対、アイツ思い当たる事あったんだよっ、もうっ!」  のあは、突然職場に現れた楓の出現に対する 気持ちを爆発させていた。 「はぁっ。スッキリした」 ようやく落ち着いたのか、二人は目を合わせると、 再び店員を呼びつけた。 「栞、今夜は長くなりそうね」 「のあ、午前様コースだね」 「お姉さんっ。わたし、熱燗2合。 わたし、焼酎の梅干し割」 二人っきりの女子会は、 想像以上に、おやじ化していった。  
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