72人が本棚に入れています
本棚に追加
blue ― 青 ―
「おはようございます」
清々しい朝を迎え、都会のお洒落なオフィスでも
新しい一日が始まろうとしている。
ただ、一人を除いて……
「ああぅ……やってしまった……」
デスクパソコンのモニターに隠れながら、
デスクにうずくまる女性が一人。
「桜井のあ!」
「はい」
「昨日は何時まで飲んでたのだ?」
頭痛が残る頭の横で、やーやんは朝から総攻撃を仕掛けてくる。
「はい。やーやん隊長。
昨日ではなく――
今朝二時迄であります」
「ばぁかもーん!」
「だって、だって、だって一人になると追い詰められて、
どんな顔してアイツと会えばって――」
まだアルコールが残っているのか、
今朝ののあは、酒の力を借りて何とか出社してきた様子だった。
「よし。よく頑張った。
あと十五分後には全て解決する。もう少し頑張るのだっ!」
やーやんとの、温かなやり取りでようやく上半身を上げたのあが聞き返す。
「えっ? やーやん? 今日、アイツ昼からじゃなかった?」
やーやんは、社内メールを確認しながら今日の仕事の確認をしている。
「うん。変更になって、朝からだよ」
「うそっ?」
「えっ、え、いつ変わったの?」
「昨日松坂さんが帰るとき、向井部長がお願いしてたのよ。
10月末までの一ヶ月の契約で結果を出して欲しいからって――
あれ?言わなかったっけ」
「えっ、やばい、メイクなおさなきゃ!」
のあは、乱れた髪と崩れたメイクを気にしたのか
慌てて化粧室へと走って行った。
ここにも一人魔女がいた様だ。
先程までの、グダグダなど一切感じさせない程、
短時間でのあは、清らかでさわやかな女性へと変貌していた。
手にした二日酔い対策の、空のドリンク瓶を机の引き出しに隠すと、
いつでも来いと言わんばかりの状態で待ち構えていた。
「ねぇ。やーやん」
のあは、おしとやかに甘えた声で問いかける。
「うん?」
「あのね」
「うん?」
「帰りたいっ」
「ダメっ!」
やーやんの、返答は即答! だった……
最初のコメントを投稿しよう!