Indigo  ― 藍 ―

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Indigo  ― 藍 ―

「おはようございます。ニーシマーケットコーポレーションです」 ICタグを首からぶら下げた若い女性が電話対応を行い、 簡易ミーティングは時間の有効活用の為なのか、 スタンディング形式でテーブルに映し出されるモニターをチェックしながら 業務進捗を行う男女の姿が――。 ニーシマーケットコーポレーションは、 一部上場企業が手を出さない隙間産業(niche market) に視点を向け 急成長中のベンチャー企業だ。 広々としたビルのワンフロアをぶち抜きにした、 都心の開放的なオフィスの中央に位置するガラス張りの小さなミーティングルームに 桜井のあはいた。 「それでは、次の議題だが」 主導権を持ちながら淡々と部下に指示を出す男の傍に座るのあは、 少し硬い表情をしていた。 「これまで、当社においても合理化は進めてきたが、 もう一つ踏み込んだ方法によりコストダウンや更なるIOT化を進め、 クライアントへ提供したいと考えている」 「桜井、IOTってわかるか?」 「えっ、その、あの、聞いたことはあるのですが――」 向井部長は手に取ったホワイトマーカーをのあに手渡し、 ガラスボードに今日の日付を書くよう命じた。 「2018年9月30……」 徐々にインクがかすれ始めた。 「あっ、あのすみません。新しいマーカ―とってきます」 扉を開けようとするのあを、向井は呼び止めた。
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