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最寄駅から八分程歩いたところに都会には珍しい自然公園がある。
駅前の賑やかな繁華街から少し離れているせいか、
日が暮れる頃になると、人通りもまばらになる立地に一際目立つ大きなガラス張りの
真っ白い建物がそびえたつ。
優しくオレンジ色にほのかに光る照明に目を向けると
「カフェバー Queen & Joker」と流木に刻まれた看板が目についた。
「ここか」
誰かと待ち合わせでもしているのか、扉の前で三十歳前後だろうか?
黒いジーンズに真っ白なシャツ、グレーのジャケット姿の一人の男性が佇んでいた。
昼は、自然公園を眺めながら少しセレブリッチな軽食を頂けるカフェQueen、
夜は、お洒落な雰囲気を醸し出すBer Jokerとして不定期で営業している様子だった。
不定期と言うのは、普段は結婚式の二次会や外資系企業のパーティ会場として
貸切りになる事が多く、一般客が夜利用できるのは月に二日程しかなかったからだ。
言わば隠れ家的な存在の店だった。
暫くすると道路の向かい側に一台のタクシーが停車した。
「あっ、お釣りはいいから」
聞き覚えのある大きな声に自然と微笑みを浮かべた様子だ。
タクシーから降りた二人の男性は、店の前に待つ男性へと駆け寄り店内へと姿を消した。
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