仮面の自分

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 次に目を開けるとチカチカとテレビだけが眩しかった、帰ってきたのは昼前だ、いったい何時間ここで眠っていたのだろうか、スマホを確認するが、磨理からの連絡は無かった。かけた電話もつながらなかった。何故こんな事になってしまったのか、これで良かったのか、昨日この決断をした自分に聞きたかった。  突然頭を過ぎる――  ペルソナ――――  今の俺は誰だ?  磨理の前の自分、仕事場の自分、誰といる時の自分なのだろうかと柳本の言葉の意味がやっとわかった気がした。  一人でいる時の自分、そんな自分はどんな自分でいればいいのだろう、そんな事も分からなくなっていた。  ペルソナの仮面をつけている方がどんなに楽だろう、本来の自分なんてものは、この会社に入って少しずつ、失っていたのだろう。もぬけの殻の自分は既に修復不可能だった事にも気がついた。  会社が好きな訳ではないが、会社に行きたい、とまでに思った。  翌朝、俺は始発で会社に行った。仕事をしている事で自分を取り戻せる、そう思った。  流石に月曜の朝は誰もいない、デスクが並ぶ嫌いな光景が妙に落ち着く。一杯のコーヒーをすすりながら考えた。ここにいる自分が本当の自分ではないのか、だとすればなんて嫌な人生なんだ、理不尽な事で怒られ、意味もわからん若手の尻拭いまでさせられる。会社には居たくはないが、会社しかいる場所がないというのも事実だった。  コーヒーを飲み終え、パソコンの電源を入れたのと同時に着信音が聞こえる、磨理かもしれないと慌てて画面を見るとそこに浮かぶ文字は、今後起こる事態に備えろと、俺の危険信号が鳴り響く。 「佐藤、お前何してくれたんだよ」 「はあ」 「はあ、じゃねーよ昨日テメーが勝手に作って送ったデータ、全然ちがうんだよ」 「え、でも」 「はい、だろうが! 永本そっち行かせたから、後はそっちでやれ」  一方的に電話を切られる、変な汗が滲んだ。昨日作ったデータを確認しようとファイルを開く、どこが違う? 何が間違いだ? 隣の柳本のパソコンを開いて確認もした、校正紙との違いは無い、あるとすれば......
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