仮面の自分

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「おざーっす」  不機嫌そうなテンションで入ってきたのは永本だった。 「ったく、勘弁してして下さいよー」 「あ、ああ、悪い……」  俺のパソコンを覗き込む永本、「はあー」とため息が出る。 「なんでこれなんですか?」 「え? このデータじゃないのか?」 「それ、ボツのデータっスよ、校正捨ててあったっしょ?」 「あ、ああ、確かに」  永本は自分のパソコンを開き画像を俺に見せる、そこには全く違うデザインがあった。 「これは」 「トラブルなんてありませんよ、もう発注も終わってますよ、なんでこんな事したんですか?」 「でもクライアントからクレームって」 「......それ、誰が言いました?」 「柳本だけど......」  ため息をついて自席に戻り、何やらキーボードを叩き始めた。 「おい、どういう事だよ!」 「柳本さん、外注会社からの引き抜きがあったんですよ」 「引き抜きって、聞いてないぞ!」 「あの人、辞めるんですよ、今日で」 「なんで!?」 「課長知らなかったんですか? それより早く工程止めないと」  愕然と立ち尽くしたまま動けない。何故あんなに信頼していた柳本が、俺を陥れるような事をするのか、頭の中の整理はいくら悩んでもつきそうにない。 「あと、謝って下さいよ、関連会社にも、俺にも」 「ああ......すまん」
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