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しばらくして、数人の社員が入って来たとか思うと、雪崩のように次々と出社する人で、デスクが埋まった。
永本の処置により、無駄になったデータは印刷する前で止まった。
その後、部長が出社してくると、全員の前で晒し者のように嫌味を言われた。課長の座を剥奪せんとばかりに駄目な見本として紹介された俺を気にしてくれる人はいなかった。
「あと、柳本は今日付で退職したからな、以上!」
部長の放った最後の一言は俺の心を砕いた。
手を止めてその一部始終を聞いた社員も、何も無かったように仕事に取り掛かる。
何故だ、何故柳本はわざわざこんな面倒な事をしたんだ、何故俺に一言も言わずに退職したのか、たまらず外へ出て電話をかけた。
「――――」
何度掛け直しても繋がらない。
「チクショー、何で出ねえんだよ!」
「......柳本さん、佐藤課長の事、嫌ってましたよ多分」
廊下に出てきた永本が俺の前でそう言った。何故俺が嫌われなければならない、あんなに仲良く話し合った仲なのに、好かれる事はあっても嫌われるなんて事は無いはず。
「何故だ、何でお前に分かる?」
「課長、よく柳本さんに仕事押し付けてましたよね」
「押し付けるというか、あれはあいつが親切で」
「課長が朝来たあの日、柳本さんが目を真っ赤に腫らしていた朝、ペットの犬が亡くなられてたんですよ、それで早く帰りたかった。けど課長の仕事振りをみて、それを言えなかった」
「そんな......」
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