仮面の自分

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 足が地面を蹴る、次へ次へと。気持ちが先走り、出す足がついてくるのが精一杯だ、エレベーターのボタンを押す回数が増える、こんな事をしたところで何も変わらないが、はやる気持ちがそうさせる。  ドアノブに手をかけた瞬間、ためらう。この先にいるのは磨理だ、どんな顔で会えばいいのか、なんと話せばいいのか......  気がついた時にはドアを開けていた、大きな声で言えばいい、いつもと同じように...... 「ただいま!」  奥からいつも通りの磨理が顔を見せた、ほんの数日会わなかっただけなのに、もう何年も会っていないような気がした。 「おかえり」 「磨理......」  謝るのはもう辞めておこう、こうして磨理にまた会えた、帰ってきてくれただけで俺は幸せだ。 「あのさ、地酒買ってきたからさ、飲もうよ」  一升瓶を手に持ち、笑顔で微笑んでいる。  俺の帰る場所はここにある。外ではペルソナの仮面を付けていてもいい。この家の中だけでは外せるようになろう、少しずつ、本当の自分を治していこうと決めた。 「ありがとう、帰ってきてくれて」  丸い目でキョトンとした表情を浮かべる磨理は、何故俺が息を切らして汗だくになっているのかが分かっていないのだろう。 「え? 何が?」 「何って、許してくれたから帰って来てくれたんだよね?」 「許す? いやあ、どうせ一人ならもう少し泊まっちゃおって、思っただけだよ」  透明な日本酒が小さなグラスに注がれた。 「えー!!?」 ――了――
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