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妻の作ってくれた弁当を喉に一気に流し込む、味わうなどの時間は無い、休み時間でも時間が無いのだ。階段を上がり屋上で若い数人と昼食をとっていた永本を呼び出す。
「おい永本」
「はい」
「何で朝遅刻したんだ?」
「え? 何でってそりゃ起きれないですよ、俺昨日十時まで残業したんですよ、部長に言われて大手クライアントの案件やってんスよ、神経使うんスよ! 朝八時に出社なんて無理っしょ、むしろ頑張った方ですね」
……腹がたつ事を通り越すというのはこういう事なのかと思わされる。
「あのな、他の会社はどうか知らないけど、この会社で十時なんて早い方なんだ、俺なんていつも十二時近いんだぞ、それでも皆んな朝から来て頑張っているんだよ」
「......パワハラっすか、課長」
「いや、そうでは無いが」
「過労で俺、死んだらどうするんですか? それは俺に死ねと言っているのと同じことですよ、まあ訴えないですから安心して下さい」
くるりと背中を向けて戻る永本、その背中に打つける言葉は出なかった、ただ途轍もない怒りのみが残った。昼から外注業者と打ち合わせだ。急いで用意しなければ間に合わない、残りの休み時間は移動時間になった。
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