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受話器を置いて私を見る沢田課長の視線に緊張しながら私は口を開いた。
「あの、そ、そ、総務部から....異動してきました」
どもりすぎてしまうし、全身もかなり熱くなってきた。
沢田課長は、座ったままで
「......名前は?」と私を見上げた。
名前。
確かに名前は、お互いに知らないままだった。
「は、はい。春川と申します」と挨拶した。
じっと私を見上げるブラウンがかった色の瞳が、ほんの少し光を帯びた。
カラカラに喉が乾いていく。
「はるかわ......か。ふーん」
意味深に私の名前をゆっくり呟いてみせてから
「これ、コピーして。10部」
と唐突に言い、束になった用紙を渡してきた。
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