本日は冷え込みが激しそうです

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「は?素人」 「はい、プロの方では、そのお試しに?というか、それもなくて、全くの初めてですか?」 声を小さく潜めて聞いた。 デリケートな話は、あまり大声で話さない方がいいだろう。 沢田課長の眉間に皺が深く刻まれた。赤くなった耳が恥ずかしい話題だと思っていることを顕著に現している。 「もしかして、そこは秘密ですか?」 いくら、私が初めての女だとしても深く踏み込み過ぎたかもしれない。 むちゃなことを聞いた。 沢田課長は、グラスビールを一気に飲み干すとバーテンに「もう一杯」と注文し、グラスをテーブルに乱暴に音をたてておいた。 「あんた、もしかして、俺が一年前のあの夜まで未経験なチキン野郎だとでも思ってるのか?」 顔がだいぶ怒っている。 だが、チキン野郎だと思われるようなことを言ってきたのは自分のほうだ。 はっきり言って、黙っていたら未経験かどうかなんて、よっぽどでない限りわからなかったのに。 「はあ、でも馬鹿にとかしてませんから。私と同じだったんだなって勝手に親近感がわいただけです」 「勝手に親近感をわかせるな。俺は、そういう意味であんたを初めての女だと言ったんじゃないからな。馬鹿にすんなっ」 すごく怒ってる。マジ怒りじゃん。 正直言って、これは本当のことを当てられた人のキレぎみな怒り方だから。 「そういう意味でって、他にどんな意味で?」 新しくきたグラスビールを持ち上げ、ごくごくと喉をならして飲んだ沢田課長。 少し黙って俯いていたあと、グラスから手を離し、私へ顔を向けた。 だいぶ落ち着いたのか、眉間の皺が消えている。 「俺の言い方が。あんたを誤解させたようだ。改めて解説する」 沢田課長は、私の顔をまじまじと見た。 「はあ、解説ですか....まあ、お願いします」 「初めての女って言葉の意味だが、それは」 咳払いをする沢田課長。 「ん、つまり、意気投合して一緒にホテルまで行ってキスもして盛り上がった。それなのに結局あの夜、服を途中まで脱がしておいて」 私は一気にここまで話した沢田課長の息継ぎの様子を見ながら、段々、あの夜を鮮明に思い出してきて恥ずかしい気持ちでいっぱいになっていた。
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