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お父さんはふざけていなかった。モニターごしに2匹の動物たちと話をしたあと、すぐ支度すると言って急いで自分の寝室にあるクローゼットから着替えのシャツと下着を鞄に入れて、玄関に走って行った。
「緊急で出張することになった。明日には帰ってくるけどあきら、留守中戸締りはしっかりするんだぞ」
そのままお父さんは スーツを着た牛とイノシシの後ろにあった車に乗り、当たり前みたいに空中を飛ぶように走っていった。
お父さんが消えていった空には、鳥と一緒に ほうきに乗った魔女や羽の生えた馬が自由自在に飛んでいた。
......夢から覚めてないみたいだ。
僕はほっぺたをつねってみたら痛かった。
「どうだね? これが夢と現実が混ざった世界、香緒巣町(かおすちょう)だよ」
リビングから 明け方に出会った 黒い丸が お父さんが残していったコーヒーを飲みながら玄関に飛んできて意味がわからないことを言った。僕たちの町はそんなおかしな名前じゃない。
絶対......本当に違うんだけど、あれ......。
「君の心の声を代弁してやろう。......あれ、僕たちの町って何て名前だっけ?」
黒い丸には顔が無いけれど、今ドヤ顔しているのは分かった。
「お前さっきからなんなんだよ!? こんな色々おかしくなった町を見て面白いのかよ」
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