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寝なきゃ見れないものがこちらにやってきて
「早く覚めろ! 早く覚めろ! 早く覚めてくれ!」
その夜、僕こと枕木あきらは恐ろしい夢を見た。夢の中で夢だと分かる明晰夢というものなのも分かっているから、行きを切らせ逃げながら自分に向かって叫んでいる。
塾から帰ってきて、お風呂に入り、ベッドに潜って目をつぶったとたんに、目の前に無数の影が立ちはだかり、僕に迫り寄って来てそれから逃げていた。
影のような煙のようなそれらは、動物の形をしたものから、人のように2本足で歩くものもいた。
山のように大きな影や 米粒のように小さなものまで全部が僕に向かってジリジリと迫ってくる。
ー 王子さまはどこだ。王子はどこだ? お前は彼に会っただろう。 お前からは王子の匂いがする。居場所を教えろー
色んな形と黒い物体たちは口々に僕に問い詰めた。
「知らないってば! 王子になんて会ったことないよ!」
僕には何のことだか 家がわからずとにかく逃げるばかりだった。 息を切らせながら走っていると 突然 見えない壁に顔をぶつけた。痛くはなかったし鼻血が出なかったのは、夢の中だからだろう。
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