追憶の夢

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 確か、深夜に仕事から帰ってしばらく机でペンを走らせた後、よく眠れないからと薬局で買った睡眠薬を飲んでグッスリと床に就いたはずだ。  社会人になって半年、仕事の疲れとストレスで最近まともに眠れていなかったから、初めて使用した睡眠薬の効果に感心したのを覚えている。  これは確かな記憶だ。その証拠に、机の上にはペンと紙が残っているし、枕元には睡眠薬の空瓶が転がっている。  ああそうか、つまりこれは夢から醒めた夢ってやつか。  なるほどね。そうと分かれば、もう暫くこのまま目覚めないでのんびりとしよう。  どうせ起きても、苦痛でしかない仕事と面倒な人間関係が延々と続く職場へ嫌々と向かうだけ。  何の楽しみも無い、何とも億劫で喧噪とした日々。  本当は、こんなはずじゃなかった。  それなりに頑張って、それなりの大学を卒業して、それなりの会社に就職したから、それなりの幸せが待っていると思っていたのに。  何かに抗ったり、一生懸命になったこともなく、ひたすらに妥協を重ねてきた。  そんな無味乾燥とした人生でも、大人になることで少しは面白くなると思ったのに。  なんでだろう。どうしてこうなった? どこで間違えた? 何が悪かった?  俺は一体、何がしたかったんだろう?
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