追憶の夢

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 いや、もういいや。これ以上考えても苦しくなるだけだ。虚しくなるだけだ。  今は夢の中でダラダラしよう。  目の前の自分に背を向けて寝転んだ瞬間、ふと気付いた。気付いてしまった。 「あぁ、そうか……俺は今までも、こんな風に嫌な現実(こと)から目を背け続けてきたのか……」  だから今まで、こんなにも心が乾いていたんだ。  だから今度は、二度と覚めることのない深い眠りにつくことを選んだんだ。 「ハハッ、なんだ……もう死んでんじゃん、俺……」  とても久し振りに、心の底から込み上げてきた笑い。  しかし、それは絶望と諦めの感情が混ざった悲しい笑み。  これが、俺の見る最後の夢で、最初の現実、か。  何の充実感も達成感も無い。何も残らない人生。  いや、少し違うな。その事実が、現実が、どうしようもなくやるせない。  心残りだ。 「あ~~、もうちょっとだけ、頑張って生きてみてもよかったかなぁ……」
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