第三章 閻魔の思惑

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「そういうヨシュアこそ妙に深刻な顔をして見えるんだけど、俺の気のせいか」 ずばり的中させたアベルの指摘に、ヨシュアはとっさに言い返した。 「色々あるけど、いつもの災難の一つだから」 出てきた言葉は、誤魔化したい本気度に合わせて絶妙だった。 「ふーん、あんなに悲愴な面して向かってきたのに?」 さすがに、付き合いが長いだけあってアベルは読みが深い。 「これからは、一人でやっていけるようにならないとだろ」 ヨシュアが方針を変えようとはしなかったので、アベルは面白くなさげに腕を組んで黙り込んだ。 「なあ、ヨシュア。僕達はこれから帰るだけの道のりで、楽しく観光してきただけだから体力も気力も有り余ってる。それを知った上で、何か言いたいことはない?」 今度はエルマが気遣ってくれる。 二人とも軽い調子ながら、真面目に案じてくれているのは充分伝わっていた。 ヨシュアだって、こんな風に手を差し伸べられたら頼りたくなる気持ちが湧いてこないでもない。 「気持ちはありがたいけど、あんまり甘やかしてくれるとレイネに怒られるぞ」 そう切り返すと、アベルの眼差しはきつくなった。 「ヨシュア、間違えるなよ。俺達は他の誰かの為に動いてるわけじゃない」 アベルの険しい面持ちに、なんだかとても大事なことを言われたような気がした。 それでもヨシュアは……。 「くしゅん」 歯痒さと意地っ張りが交差する中、可愛らしいくしゃみで一斉に注目を集めてしまったティアラは小さくなって「ごめんなさい」と呟いた。
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