第三章 閻魔の思惑

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「それでもヨシュアの所に行く気があるなら、スメラギ商会として送り出してやるって。但し、ヨシュアが頼んできた場合に限るって条件をつけられたけど」 「だから、妙な雰囲気だったのか」 「ほら、やっぱり変だと思われてた。アベル、最初から誘導しすぎ。ミカル兄に見られてたら、絶対アウトって言われてたね」 「そういうエルマだって、結構な掩護射撃だったろ」 「う、まあ、相手が相手だからさ。ってわけで、ヨシュア、お互いの為にもミカル兄とロルフさんには内緒にしといて」 幼馴染み三人組の関係が大きく変わる節目なのだと本気で考えていたヨシュアなので、面白おかしいやり取りで済まされると地味に拗ねていじけたくなる。 「つまりは、二人で俺を試してたってわけだ」 「あ、それは違う。な」 ぶーたれてるヨシュアを否定して、アベルはエルマに同意を求めた。 「うん。試されてたのは僕達の方。僕達がヨシュアの信頼に足る存在なのかってね」 「意味がわからん」 「要するに、ミカル兄にとっても、ロルフさんにとっても、ヨシュアはスメラギ家の大事な次男坊ってことだよ」 「……。でも、二人とも俺についてよかったのか。さりげなく向こうの勝手に誘導されたとかじゃないんだろうな」 ヨシュアは都合の悪い話を聞き流して、話題を微妙にすり替えた。
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