おかあさんとクレヨン

2/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
  思い出のクレヨン。   記憶をめぐり。   誰かのもとへと歩いて行った。   おはよう。   こんにちは。   こんばんは。   次は、誰かな??  ……この続きが、どうしても、思い出せない。  なんだったかな。  あぁ、えっと……  はぁ、やっぱり思い出せない。  昔、おかあさんとよく歌ったのにな……  おかあさんは、僕が3才の時に亡くなった。  父さんは、おかあさんの後を追いかけて自殺した。  そして僕は子供がいない親戚の家に預けられた。  でも、その家にも子供が出来た。  僕の義理の弟だ。  悲しいことに弟が、生まれた瞬間に僕は居場所を失った。  いや、最初からなかったのかもしれない。  居場所なんて、求めたらダメなんだ。  僕は、空を見上げた。  空には、雲が流れていた。  青い空に白い雲。  ただ、それだけなのに涙が出た。  僕が、生きていることに意味があるのだろうか??  答えは、誰にもわからない。  そう、誰にもわからない……  生きることが苦しいわけじゃない。  生きる事が寂しいんだ。  そう……  寂しいんだ。  僕は、おかあさんに最後に買ってもらったクレヨンを握り締めた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!